□夏目漱石の『坊ちゃん』に、主人公はピカピカの刃物を自慢していたが、友達から
それで何をするんだと馬鹿にされ、しゃくに触って自分の指に切りつけて
見せてどうだと言い返してやった、という話があります。それ以外に効能を
証明する場がなかったのでしょう。そう、方法や資格ももちろん重要ですが、
何のためですか。必要ではありますが十分ではありませんでしょう。
□統計学はデータの有効利用、現実活用を目的とし、計算手続きはその手段です。
使う数学はシンプルで、四則、√ 、logで9割カバーし(したがってEXCELで足りる)、あと
1割は指数関数、そのうちわずか5%が微分、積分です。それでカバーできなければ、
RやPythonです。これ意外だと感じますか。
□手段だけに熱中し目的はそっちのけ、目的と手段の取り違え、ということなら
改善しましょう。統計学は万人の方法で、目的重視で必要以上の数理力は要求しません。
むしろ、判断力、洞察力、推理力を必要としますが、なかなか実感しにくく練習問題で
養われます。
□日本では「基礎が重要だ」とよく言われるのですが、そのわりには
「先端」ばかりの流行りがあり惑わされます。このクセは社会的なもので
なかなか直しにくいものです。自分は自力で解いてみると静かな自信が身に
つくのを感じることでしょう。
□全練習問題を掲げました。解答は載せてありませんが、一括して巻末にあります。
データから意味ある結果を引き出す計算が中心で、証明問題はほとんどありません。
ですが、計算自体が基礎理論の理解、重要公式の確認(記憶)をベースにして
いますから、容易な問が解けない場合は、章を読みなおしてください。
□したがって、計算作業も手間がかからないように、大きなあるいは複雑なデータは
使っていませんし、単なる数値データの計算、高度の計算テクニックも避けてあります。